加藤楸邨三〇句(千方選)

僭越ながら、加藤楸邨三〇句選をさせていただきました。

道問へば露地に裸子充満す      (寒雷)
鰯雲人に告ぐべきことならず     (寒雷)
蟻殺すわれを三人の子に見られぬ   (寒雷)
春寒く海女にもの問ふ渚かな     (雪後の天)
美しき黴や月さしゐたりけり     (雪後の天)
隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな  (雪後の天)
陽炎を負ひて家なき顔ばかり     (火の記憶)
ものいへば傷つくごとく冬の黙    (火の記憶)
爆痕より凧を冬日にあげてをり    (火の記憶)
火の奧に牡丹崩るるさまを見つ    (火の記憶)
蟇誰かものいへ声かぎり       (颱風眼)
死や霜の六尺の土あれば足る     (野哭)
草蓬あまりにかろく骨置かる     (野哭)
何がここにこの孤児を置く秋の風   (野哭)
死にたしと言ひたりし手が葱刻む   (野哭)
雉子の眸のかうかうとして売られけり (野哭)
鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる    (起伏)
木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ (起伏)
黴の中言葉となればもう古し     (山脈)
西瓜割る亡き子いつでも駈けてをり  (まぼろしの鹿)
つちくれならず蟇の子なれば肘を張り (まぼろしの鹿)
糞ころがしと生れ糞押すほかはなし  (まぼろしの鹿)
葱の香のまつすぐにきて立ちにけり  (吹越)
生まれきて餅つき臼で終りけり    (吹越)
口見えて世のはじまりの燕の子    (吹越)
おぼろ夜のかたまりとしてものおもふ (吹越)
バビロンに生きて糞ころがしは押す  (吹越)→REVIEW
雲の峯巨大な崩壊見をはりぬ     (望岳)
百代の過客しんがりに猫の子も    (雪起し)
日本語をはなれし蝶のハヒフヘホ   (死の塔)

1件のコメント

  1. <補欠>
    生きのこりゐて柿甘き秩父かな      (野哭)
    雪夜子は泣く父母よりはるかなものを呼び (起伏)
    おぼろ夜の鬼なつかしや大江山      (怒濤)

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