一陣の風におどろく松の花 飴山實

蕪村の〈線香の灰やこぼれて松の花〉という、スローモーションのような静かな句がありますが、この飴山の句は対照的に勢いと力強さがあります。もちろんこの句は「一陣の風におどろく」と「松の花」とのあいだに切れがあり、句中に切れのある取り合わせの句です。切れのあるところで、大きく切って読むと伝わってくるものが違います。よく言われますが、松とは「待つ」木です。門松のように祭事に飾ることの多い松ですから、やはり何を待つのかといえば、神や霊なのでしょう。万葉集でも何首も松が詠まれていますが、当時から神は山にいると考えられていましたから、山から神がくるのを待つ、期待して待つという意味が、この「松」にはこめられているわけです。ちなみに、季語には「松迎え」という、門松用の松を切り出してくることを意味する言葉もあります。この句は「松の花」なので、季節は春。つまり一陣の風とは、あらゆるものにいのちを吹き込むような春の風です。音をたてて吹いてくる風に、はっと目覚めさせられる思いがします。

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