このところこの世まかせや草の餅 飴山實
この句は「この世」への複雑な心をそのまま詠んでいるのだろう。「この世まかせ」を否定するのでも、また執着しているのでもない。両義的なのである。それは、どこか『草枕』を書いた漱石を思わせる。下五に「草の餅」が静かに添えられる...
この句は「この世」への複雑な心をそのまま詠んでいるのだろう。「この世まかせ」を否定するのでも、また執着しているのでもない。両義的なのである。それは、どこか『草枕』を書いた漱石を思わせる。下五に「草の餅」が静かに添えられる...
丹波は記紀や風土記などにも見られる古い地名。その地形は渓谷と盆地からなり、水の豊かなところ。まるでその風土までいっしょに届いたかのような一句である。太古も今も変わらず、さまざまなものの芽が人々に春のおとずれを告げている。...
糸桜は枝垂れ桜のこと。「いとざくら」と平仮名で書くと、より繊細でしなやかな姿を思わせる。かすかな風が揺れやすい枝の所々を触れているさまが目に浮かぶ。ゆったりとした気持ちが伝わってくる一句。 ※古志HPの「今日の一句」の3...
鶴岡八幡宮大銀杏倒壊 ひこばえてまた千年を始めけり
種撰み(たねえらみ)は、そもそも稲作の言葉で、塩水に種籾をひたして、浮かんでくる悪い種をのぞき、底に沈む良い種を残すこと。美味しいお米を作るための、はじめの仕事である。桶の水に浮き沈む種をじっと見つめていると、背後から吹...
埴土(はに)とは古来、陶器や瓦に用いられてきた粘土のこと。風船売が春の季語であるが、風船売の長靴についた土は、まさに春の到来のあかし。季節は春、国は泥濘の大地。 ※古志HPの「今日の一句」の2月28日掲載分です。
前書きに「金沢」とある。雪国の春に見られる風景であろう。雪代とは雪解水のこと。雪解けした水が川に流れ込み、岸辺近くまで水かさが増す。次々と流れ込む雪代の速さと、ただ静かに古びゆく岸辺の時間経過とが対照的。雪代の「動」と岸...