吉田修一『悪人』を読んで

冒頭を読むと、書き手の視点が少し厭味に感じられるかもしれない。しかし、読み進めればたちまち、その印象ががらりと変わってくる。まるで透明人間となって、さまざまな人間のかたわらに寄り添い、その言葉にならない複雑な心の声を聞き...