その声の秋風に似てゐざりしや 長谷川櫂
前書きから、「その声」の持ち主が安東次男氏であることがわかる。この句は、安東氏の持病である肺気腫が快方に向かったという知らせを聞いて、その返事に詠まれた句のうちの一つ。秋風は日の衰えを感じさせるものであるが、この句は、そ...
前書きから、「その声」の持ち主が安東次男氏であることがわかる。この句は、安東氏の持病である肺気腫が快方に向かったという知らせを聞いて、その返事に詠まれた句のうちの一つ。秋風は日の衰えを感じさせるものであるが、この句は、そ...
一桶をすべて芒が占めている。ほかの桶は秋の草花がいくつか組み合わさって売られているのだろう。その中でひときわ輝いている芒の存在感が伝わってくる。芒を売り買いする人々の声も聞こえてきそうである。ひょっとすると、この作者は桶...
山から伐り出してきた一本の竹。伐られる前は他の竹と変わらぬそれであったはずだが、根茎から伐り離されたとたんに、選ばれた竹となる。あとには戻れない。他の青竹にも七夕竹となる可能性は等しくあったはず。しかし七夕竹となったのは...
良寛の故郷、出雲崎で詠まれた句。桔梗のように青く澄みきった秋の空が思い浮かぶ。切妻(きりづま)とは、大棟から二面を左右にふきおろす屋根の造り。桔梗は紙風船のように貼り合わさった蕾で、花びらがひらいても折り重なることがない...
立秋といっても、まだまだ暑い。とはいえ、焼けるような夏の大地に打つ水とは違い、その涼も大きく感じられる。玄関先であれ、狭い庭であれ、水を打てばそこに秋めく宇宙の入り口がひらけてくる。次第に夏の余韻も冷めて、本格的な秋とな...