代る代る蟹来て何か言ひては去る 富安風生

風生晩年の鳥獣戯画を思わせる一句。蟹が何匹も代る代る自分のところにやってきては、泡をぶくぶく吐いては去っていく。擬人法の句だが、リアルな蟹の姿がいきいきと見えてくる。なお、この句には前書きがある。「微恙(びよう)のため一日休養中す。山荘のいたるところ山蟹が栖(す)に満つ」。
出典:『傘壽以後』

2件のコメント

  1. この句は「何か」がポイントだ。何を言っているのかがわからない、ということが大事。ぶつぶつ何か言っては去っていく、人も蟹も同様に「他者」だだということ。蟹のことが分かったようなことを書くと、くだらない擬人法になるから要注意。

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