向う家にかがやき入りぬ石鹸玉 芝不器男
しゃぼんだまが垣根を越えて、輝きながらゆらゆらと向いの家へ入っていく。不思議と時間が引き延ばされて、そこに空白がうまれたかのように、時の長さを感じさせる。時間の進む速度が遅くなったかような感覚である。不器男の句の多くに、...
しゃぼんだまが垣根を越えて、輝きながらゆらゆらと向いの家へ入っていく。不思議と時間が引き延ばされて、そこに空白がうまれたかのように、時の長さを感じさせる。時間の進む速度が遅くなったかような感覚である。不器男の句の多くに、...
繭玉とは新年季語で、柳などの枝に繭形にまるめた餅や団子を数多くつけた、小正月の飾り物のこと。もともとは、農家の副業として養蚕が盛んだった地帯で繭の豊収を祈願して作られたものです。現在の姿は、東京でよく見かける商店街の入口...
この句には前書きに「仙台につく途はるかなる伊予の国をおもへば」とあり、はるか彼方に故郷を想ふ句であることがわかります。ホトトギスに掲載され、虚子が絶賛したことで、不器男が一躍注目を浴びることになった句として、よく知られて...
白藤が春風に揺られるときは、たしかに目に映る色は白だったはずなのに、それが止んだとたんに、その花びらの白の奥に緑が微かに見える。はっとして、その色に気づくもつかの間、またすぐに藤は揺れて白の残像にひきづられた花となる。つ...
上五の「いっぺんの」の促音「っ」と、半濁音の「ぺ」、つづく中七のパセリの「ぱ」のP音が、その一瞬のときの瞬間性を際立たせている句だと思います。床に落ちたパセリがさっと掃かれる瞬間、目の前から消えるものは「緑」です。緑色は...
日が長くなってくると春を感じます。冬あいだ中、しんとしずまりかえった世界にあった生きものたちが、春の気配を感じながら徐々に動きをとりもどす。おそらく、この句もそのような瞬間をとらえたのだろうと思います。永き日とは、つまり...