風鈴やしんと戦争ありにけり 長谷川櫂
最後がもし「ありけり」であれば、むかし戦争があったそうだということになるが、この句は「ありにけり」。つまり、そこに戦争があった、そのことにいま気づいたということである。 しかも、この句は「しんと」戦争があったという。戦争...
最後がもし「ありけり」であれば、むかし戦争があったそうだということになるが、この句は「ありにけり」。つまり、そこに戦争があった、そのことにいま気づいたということである。 しかも、この句は「しんと」戦争があったという。戦争...
この句の前書きには、「バーミヤン破壊を嘆く人に」とある。この句を読んで思い出したことがある。それはイランの映画監督、モフセン・マフマルバフの語った、この言葉である。 〈アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあま...
作者の代表作のひとつに挙げられる句であるが、なぜか句集におさめられていない。さまざまな解釈がありそうな句であるが、私がこの句を読んだときに、とっさに思い当たったのが、「鶴の恩返し」という話である。もちろん、これは日本人な...
隠岐は中国地方山陰にある島で、佐渡と同じくかつては配流地であった。後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流されたことでも知られる。その島をたった秋風が、年も暮れる今頃になって吹き届いたというのだから面白い。この句には前書きがある。すな...
すっかり葉も落ちきり、寒さの中で時間がとまったかのように立ち並んでる冬木。しかし、その内側では春になっていっせいに芽吹き出す力が、ひっそりと、そして確実にためてこまれいる。気をそらしたとたん一気に噴きあがった牛乳は、どこ...
息の白さは、寒さを視覚的にとらえる季語である。しかし、この句は、そこにとどまらない。金閣寺を前にして何を言おうが、すべて白い息へと変わってしまうというのである。まるで、口からどんな言葉を出しても、すべて白紙に戻ってしまう...