明易く海のしぶきのくだけつゝ 松瀬青々

「明易し」は和語ですが、漢語でいうと「短夜」。もちろん夏の季語です。夏は夜がいい。そう清少納言も書いているように、夜が明けてしまうことを惜しむ心が、この季語の本意です。宮廷では、朝になれば男は女のもとから帰らねばならないので、この「明易し」という言葉にその気持ちをたくした恋の歌の数々があるそうです。ただ、やはり日本の夏は蒸し暑い。だから、夏の夜はたたえるべきものとしてある。そちらが根本であると思います。青々の句は、涼しい風を感じる一句です。早々と白んできた夏の海。潮はまだ満ちており、波がしらに飛沫がたっている。「しぶきのくだけつつ」と余韻を残して終えているせいか、夜が明けてしまうことを惜しんでいる気持ちと、今日もまた暑くなりそうだという予感まで漂ってきます。

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