能面の目鼻を抜ける初嵐 飴山實

屋外の能舞台に嵐が迫っているのだろう。初嵐は台風の前触れのような風のことで、秋を告げるもの。飯田蛇笏の〈なきがらや秋風かよふ鼻の穴〉という句は、もはやその鼻の穴には息がないということに気づかせる秋風だが、この句の初嵐は、そこに生きた表情を見ていたはずの能面が穴の空いた面でしかないことに気づかせる。むしろ、初嵐のほうが何ものかの息のようにも思える。

※古志HPの「今日の一句」の8月29日掲載分です。

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