舌出して足出して貝寄せてくる 大谷弘至

無気味にしてユーモラスな貝の姿がありありと目に浮かぶ。蛤のような二枚貝であろうか。腹も腸さえもさらけ出してやってくるかのようで、どうもこの世のものではなさそうである。松瀬青々の〈貝寄せや愚かな貝も寄せてくる〉という句があるが、さらに具象化が極まっている。もちろん、貝寄せとは西からの季節風のことである。その風で浜に吹き寄せられた貝殻を造花にして、大阪四天王寺の聖霊会に供えることから、貝寄風といわれる。だから、この句の実体は風でしかないはずである。寄せくる風に目を瞑ると、不思議とこんな貝の姿が見えてくるのかもしれない。
出典:句集『蕾』

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