声上げて蚯蚓を呼べる蚯蚓かな 大谷弘至

聞こえないものを聞き、見えないものを見、そして言葉にできないものを言葉にする、それが俳句である。この句の眼目はまさにそこにあるのではなかろうか。蚯蚓はもちろん鳴かない。しかし、俳句ではその声を確かに聞くことができる。この句の前には〈はばからず蚯蚓鳴くなり土の中〉〈土食うて枯れたる声か蚯蚓鳴く〉という句が置かれており、句集全体で「蚯蚓鳴く」を詠んだ句は七句もある。この多さは、作者がこの季語に託すものが大きい証拠であろう。なかでも、この句の蚯蚓はとりわけ寓喩的である。誰もがこんな「蚯蚓」であったはずであり、また世界のどこかにかならずこんな「蚯蚓」がいるはずである。
出典:句集『蕾』

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