大峯あきら自選句集『星雲』

愁いの秋も深まってきました。そんなときは星空でも眺めて、ぼーっとしたいところです。しかし、この秋は雨の日が多く、星空どころか、月さへあまり見られませんでした。だからというわけではないですが、今回は大峯あきらさんの自選句集『星雲』から句を選ばせていただきました。

帰り来て吉野の雷に座りをり

茶畑の風に押されて春の人

餅搗のすみて夕日の前を掃く

日あたりて神有月の太柱

崩れ簗観音日々にうつくしく

蒼天に浪くだけゐるどんどかな

高浪をうしろにしたり暦売

法然の国に来てをり母子草

神々のたたかひし野に鍬始

人は死に竹は皮脱ぐまひるかな

夜の秋の平家におよぶ話かな

難所とはいつも白波夏衣

くらがりに女美し親鸞忌

大夕立信濃を叩き甲斐へ去る

花のよく見えてゲーテの机かな

虫の夜の星空に浮く地球かな

花衣たたみて暗き一間かな

月はいま地球の裏か磯遊び

有名な句は〈虫の夜の星空に浮く地球かな〉ではないでしょうか。この句は、一物で読めますが(地球が主語)、「浮く」のは読み手自身と取れば、取り合わせとしても読めます。どちらにしても、「虫の夜の星空に浮く」で少し切って「地球かな」とつけるように読むのがいいように思います。

気になるのは「浮く」という言葉です。地上を生きる者に上下はありますが、宇宙空間は天地というものはなく、上も下もありません。その状態を「浮く」と表現していいのかどうか。大地から離れてある状態が浮くのであれば、大地そのものが浮くとはどういうことか。地球は太陽の重力圏にあります。いわば、地球は遠心力で太陽に落ち切らずに周っている。いわれてみれば、これは「浮いている」といっていい。人も地球の重力に対して浮いていなくとも、地球と一体とみれば、太陽に対して浮いているわけです。

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