花筏やぶつて鳰の顔のぞく 飴山實

鳰(にお)とはカイツブリのことです。通常、鳰は冬の季語になりますが、ここでは主の季語が花筏(はないかだ)なので、春の鳰です。この句は、池一面を覆う桜の花びらの下から、鳰がひょいと顔を出す、その瞬間を詠んでいます。鳰は潜水が得意な水鳥ですから、この句の景は分かりやすいはずです。鳰は春から水草で浮き巣を作るそうで、その作業の途中だったのでしょうか。この句はやはり「やぶつて」が上手いと思います。そこが池であることを忘れるほど見事な花筏であったということが、まさにそれが破られることによって気づかさるわけですから。その詠み手の驚きを、水面にあらわれた鳰の顔が表情にしてしまうという笑いがある句だと思います。

追記:
鳰は琵琶湖に多いそうです。芭蕉に〈かくれけり師走の海のかいつぶり〉という句もあります。この海とは琵琶湖のことだそうです。芭蕉の句をふまえると、この句は師走に隠れた鳰が春に顔を出したという感じでしょうか。

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