方丈の大庇より春の蝶 高野素十

竜安寺と前書きがある。方丈とは寺院の建物のこと。この句はさまざまな読みができる。例えば、この句を三次元のパースの中においてみれば、方丈の大庇のゆったりとした流線と、蝶の不規則に上下する小刻みな曲線が奏でる音楽のようにも見える。また、句に寄って、二次元的に見れば、庇と蝶とが同じ大きさの黒白パズルのような絵にも見える(まるで図と地が反転してしまうエッシャーのパターン絵のような)。さらに、あっけないほどの一瞬の「動き」として読むこともできる。暗から明へ、大から小へ、静から動へ、無から有へ。それは、かすかではあるが、たしかに「生の飛躍」を感じさせてくれる。
出典『初鴉』

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