飯田蛇笏五〇句(千方選)

鈴の音のかすかにひびく日傘かな   (山廬集)
はつ汐にものの屑なる漁舟かな    (山廬集)
ふるさとの雪に我ある大炉かな    (山廬集)
古き世の火の色うごく野焼かな    (山廬集)
洟かんで耳鼻相通ず今朝の秋     (山廬集)
芋の露連山影を正しうす       (山廬集)
葬人歯あらはに泣くや曼珠沙華    (山廬集)
残雪を噛んで草摘む山の子よ     (山廬集)
雪晴れて我が冬帽の蒼さかな     (山廬集)
敵二三まうけて住むや冬山盧     (未収録)
尿やるまもねむる児や夜の秋     (山廬集)
流燈や一つにはかにさかのぼる    (山廬集)
餅花や庵どつとゆる山颪       (山廬集)
信心の母にしたがふ盆会かな     (山廬集)
極寒のちりもとどめず巖ふすま    (山廬集)
死骸や秋風かよふ鼻の穴       (山廬集)
たましひのたとへば秋のほたるかな  (山廬集)
折りとりてはらりとおもきすすきかな (山廬集)
わらんべの溺るるばかり初湯かな   (山廬集)
温石の抱き古びてぞ光ける      (山廬集)
こしかけて山びこのゐし猿茸     (霊芝)
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり    (霊芝)
土を見て歩める秋のはじめかな    (霊芝)
死火山の膚つめたくて草いちご    (霊芝)
大つぶの寒卵おく襤褸の上      (霊芝)
鼈をくびきる夏のうす刃かな     (霊芝)
雪山をはひまはりゐる谺かな     (霊芝)
山姥を射て来て爐辺に睡りけり    (霊芝)
草童のちんぽこ螫せる秋の蜂     (山響集)
草は冷め巌なほ温く曼珠沙華     (山響集)
夏雲群るるこの峡中に死ぬるかな   (山響集)
夏真昼死は半眼に人をみる      (白獄)
梅雨に抱く骨ほこほことぬくみあり  (白獄)
国捷ちて芋雑炊の煮えたぎる     (白獄)
冬瀧のきけば相づぐこだまかな    (心像)
大土間や畚ぶちあげし藷のおと    (心像)
谷梅にとまりて青き山鴉       (心像)
花弁の肉やはらかに落椿       (心像)
なやらふやこの国破るをみなごゑ   (春蘭)
なまなまと白紙の遺髪秋の風     (雪峡)
子のたまをむかへて山河秋の風    (雪峡)
扇おくこころに百事新たなり     (雪峡)
うなづきて露にめつむる仏かな    (雪峡)
八方の巌しづまりて薺打       (家郷の霧)
炎天を槍のごとくに涼気すぐ     (家郷の霧)
原爆忌人は孤ならず地に祈る     (家郷の霧)
炎天や地に立命のわれと影      (家郷の霧)
寒雁のつぶらかな声地におちず    (椿花集)
神がくれせる童を拾ふ恵方嶺     (椿花集)
誰彼もあらず一天自尊の秋      (椿花集)

*9/30、3句差し替えました。

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