蚊柱の湖の空おぼつかな 長谷川櫂

淡海の章に収録された一句。淡海は琵琶湖の古称。私はまだ行ったことがないので、琵琶湖はまだ想像上の場所である。

琵琶湖では、びわこ虫と呼ばれる小さな虫が大量発生することがあるらしい。正式にはオオユスリカという。掲句の蚊柱も、実際は小さなものなのかもしれないが、竜巻のように立ち昇る様子を思い浮かべてしまう。蚊柱はオスがメスに存在を知らせるためのものらしい。空は女心のようにはっきりしないのだろう。

琵琶湖は年に一回、深呼吸をする。上層の酸素を多く含んだ水と下層の水が入れ替わり、湖底に酸素を送るのだ。しかし上層の水温が下がらないと、この現象が起こらない。近年、温暖化の影響で、この循環が起きないと、その年は湖底の生物が大量死することになる。

おぼつかないのは、空だけではない。

出典:句集『松島』

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA