かなかなのどこかで地獄草紙かな 飴山實
かなかなとは蜩(ひぐらし)のこと。蝉は夏の季語ですが、蜩は初秋です。その声は、夏の終わりのさみしさ、せつなさ、むなしさ、といった言いようのない気分そのものです。 地獄草紙とは、浄土仏教にある「六道」の思想に基づき、地獄が...
かなかなとは蜩(ひぐらし)のこと。蝉は夏の季語ですが、蜩は初秋です。その声は、夏の終わりのさみしさ、せつなさ、むなしさ、といった言いようのない気分そのものです。 地獄草紙とは、浄土仏教にある「六道」の思想に基づき、地獄が...
すっかり古い葉も散りきって、さっぱりした姿の青々とした竹が空に向かってまっすぐ高くのびている。見上げるだけでも、くらっとしそうな高さなのでしょう。もちろん、高さだけでなく、そこには目の前がくらくらするような真夏の暑さがあ...
この句は偶然を劇に仕立てあげている句だと思います。もちろん喜劇ですが、たんにコミカルな笑いだけに終らないのが、この句の凄いところです。なぜなら、そこには偶然性の肯定があるからです。それがあるとないとでは、この句の面白さは...
蛞蝓(なめくじ)は蝸牛(かたつむり)が殻を失う方向へ進化したものだそうです。二本の角のような触角をもち、腹全体がを足裏のようにして這い進む。体はほとんどが水分で、その体表は粘液に覆われおり、塩をかけると体液が外に出てしま...
桜の花はその散り様の美しさから潔く死ぬことの美学に使われることがありますが、万葉学者の中西進によれば、万葉集ではそのような意味は薄く、むしろ桜は「不死」の象徴であったそうです。簡単にいうと、桜は花開くとそのありあまるエネ...
杏の花が咲く春を迎えて、山はぬくめられた水分によってゆらゆらと動き始める。人の気持ちも同じように動き出します。生活においても、都心に出てくる人、また故郷に帰る人と、移動の多い頃でもあります。杏の花が咲き乱れる山のふところ...
※書き直しました。 湿った土の匂いまでしてくるような気持ちのよい一句です。この句の季語は、もちろん田植えです。雪解け水がたゆみなく流れ、生きものたちの動きも活発になってきた、雪国の初夏。田んぼにも水がはられ、鏡のようにあ...