夢の世に並びて二つ露の石 長谷川櫂
この句には、「法然院、谷崎潤一郎、松子夫人の墓所」と前書きがある。この墓所には大きな鞍馬石が二つおかれており、その間には枝垂桜が一本植えられているという。左の石が谷崎夫妻の墓で、右の石は松子夫人の親族の墓。石には左が「寂…
この句には、「法然院、谷崎潤一郎、松子夫人の墓所」と前書きがある。この墓所には大きな鞍馬石が二つおかれており、その間には枝垂桜が一本植えられているという。左の石が谷崎夫妻の墓で、右の石は松子夫人の親族の墓。石には左が「寂…
昨夜、金子兜太の最新句集『日常』を読みなおしていて、ふと出くわした一句です。『日常』には、もっと圧倒的に心を打つ句がたくさん入っています。どちらかと言えば、この句は目立たないほうの句かもしれません。しかし、この句はなぜか…
前書きから、「その声」の持ち主が安東次男氏であることがわかる。この句は、安東氏の持病である肺気腫が快方に向かったという知らせを聞いて、その返事に詠まれた句のうちの一つ。秋風は日の衰えを感じさせるものであるが、この句は、そ…
一桶をすべて芒が占めている。ほかの桶は秋の草花がいくつか組み合わさって売られているのだろう。その中でひときわ輝いている芒の存在感が伝わってくる。芒を売り買いする人々の声も聞こえてきそうである。ひょっとすると、この作者は桶…
山から伐り出してきた一本の竹。伐られる前は他の竹と変わらぬそれであったはずだが、根茎から伐り離されたとたんに、選ばれた竹となる。あとには戻れない。他の青竹にも七夕竹となる可能性は等しくあったはず。しかし七夕竹となったのは…
良寛の故郷、出雲崎で詠まれた句。桔梗のように青く澄みきった秋の空が思い浮かぶ。切妻(きりづま)とは、大棟から二面を左右にふきおろす屋根の造り。桔梗は紙風船のように貼り合わさった蕾で、花びらがひらいても折り重なることがない…
九月一日は防災の日です。大正十二年のこの日、午前十一時五十八分、相模湾を震源とする大きな地震があり、同時に火災が発生。日本海側に台風が迫っていた関係で、太平洋側には乾いた秋風が強く吹いていたと聞きます。おかげで、その火は…