菊切りに出てゐて茜びたしかな 飴山實
夕暮れの庭に出て菊を切っている。ふと気づけば、茜色にひたりきってしまっているのだった。散文で書けば、こうなるでしょうか。この句は、視覚の句ではないと思います。夕陽の赤に染まった世界を見ているのではなく、視覚を狂わすほどの...
夕暮れの庭に出て菊を切っている。ふと気づけば、茜色にひたりきってしまっているのだった。散文で書けば、こうなるでしょうか。この句は、視覚の句ではないと思います。夕陽の赤に染まった世界を見ているのではなく、視覚を狂わすほどの...
早乙女(さをとめ)とは、田植ゑをする女性のことですから、夏の季語です。頭の「サ」は、神様のことらしいです。さくらの「さ」も同じで、ちょうど田植ゑの時期に人々が豊作を祈る、その祈りの対象を表すのだそうです。さらに言うと、そ...
一読して、疑問をおぼえた人も多いのではないでしょうか。なぜ手を触れただけで胸まで濡れてしまうのかと。 この句には、中七の「濡ゝる」という連体形のあとに軽い切れがあります。この句を「取り合わせ」として詠めば、「草の花」は添...
酒好きなら、この句の心はすぐにわかるでしょう。ただたんに、冷酒のグラスの氷がぐらりとまわった、というだけなら句にはなりません。ぐらりとまわっているのは、冷酒の氷のみならず、冷酒を飲んでいる人の酔いがまわるということでもあ...
いまにも落語家が出てきそうな句です。いうまでもなく、出囃子の太鼓です。落語のお囃子は、太鼓、笛、そして三味線などで奏ずるわけですが、そもそもは上方からのものらしいです。中七の「太鼓がはじけ」が見事です。これから面白いこと...
実にすっきりと、くっきりとした句です。「まさを」と言えば、富安風生の〈まさをなる空よりしだれざくらかな〉という有名な句があります。この風生の句は桜がしだれて、迫ってくるような動きを主題をする句ですが、飴山の句は潔く、空の...
引っ越ししてからか、飴山實全句集を詠んでからか、どうも鴨という生きものが気になって仕方がないのです。鴨は冬の季語になりますが、あのフォルム、しぐさ、声、表情、どれをとっても、なんともいえぬ愛らしさを感じるのです。私がいま...