夏の闇鶴を抱へてゆくごとく 長谷川櫂
作者の代表作のひとつに挙げられる句であるが、なぜか句集におさめられていない。さまざまな解釈がありそうな句であるが、私がこの句を読んだときに、とっさに思い当たったのが、「鶴の恩返し」という話である。もちろん、これは日本人な...
作者の代表作のひとつに挙げられる句であるが、なぜか句集におさめられていない。さまざまな解釈がありそうな句であるが、私がこの句を読んだときに、とっさに思い当たったのが、「鶴の恩返し」という話である。もちろん、これは日本人な...
隠岐は中国地方山陰にある島で、佐渡と同じくかつては配流地であった。後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流されたことでも知られる。その島をたった秋風が、年も暮れる今頃になって吹き届いたというのだから面白い。この句には前書きがある。すな...
すっかり葉も落ちきり、寒さの中で時間がとまったかのように立ち並んでる冬木。しかし、その内側では春になっていっせいに芽吹き出す力が、ひっそりと、そして確実にためてこまれいる。気をそらしたとたん一気に噴きあがった牛乳は、どこ...
息の白さは、寒さを視覚的にとらえる季語である。しかし、この句は、そこにとどまらない。金閣寺を前にして何を言おうが、すべて白い息へと変わってしまうというのである。まるで、口からどんな言葉を出しても、すべて白紙に戻ってしまう...
障子貼りは冬支度のひとつ。貼りたての真っ白な障子紙が、たるみなく、ぴんと張りつめているのだろう。張りとは、若さでもある。まるで障子が若がえったかのように思えてくる。これで厳しい冬をむかえられる。 ※古志HPの「今日の一句...
鳰(かいつぶり)は潜水が得意な水鳥。水に潜って、エサを捕る。一度潜るとなかなか出てこないそうだ。この句は、水のへこみが、鳰の水泳選手のような力強さを感じさせる。この鳰もきっと長く潜っているのだろう。 ※古志HPの「今日の...
秋が深まると、朝晩の気温は急に下がる。朝になって、一夜にして冷たくなっているものに気づかされることがある。水もそのひとつだ。この句は、飴山實の〈水そのままに胃に降りてくる寒さかな〉という句と比べてみると面白い。冬の寒さの...