冷やかに身にしみわたる今朝の水 長谷川櫂

秋が深まると、朝晩の気温は急に下がる。朝になって、一夜にして冷たくなっているものに気づかされることがある。水もそのひとつだ。この句は、飴山實の〈水そのままに胃に降りてくる寒さかな〉という句と比べてみると面白い。冬の寒さの中で縮こまった体には、水の沁み込むようなゆるみがない。しかし秋は違う。水は胃に降りれば、たちまちその冷たさを体に伝えていく。冷ややかさとともに、秋の終わりを五臓で感じる一句。

※古志HPの「今日の一句」の11月6日掲載分です。

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