金閣寺なにを言ひても息白く 長谷川櫂
息の白さは、寒さを視覚的にとらえる季語である。しかし、この句は、そこにとどまらない。金閣寺を前にして何を言おうが、すべて白い息へと変わってしまうというのである。まるで、口からどんな言葉を出しても、すべて白紙に戻ってしまう...
息の白さは、寒さを視覚的にとらえる季語である。しかし、この句は、そこにとどまらない。金閣寺を前にして何を言おうが、すべて白い息へと変わってしまうというのである。まるで、口からどんな言葉を出しても、すべて白紙に戻ってしまう...
障子貼りは冬支度のひとつ。貼りたての真っ白な障子紙が、たるみなく、ぴんと張りつめているのだろう。張りとは、若さでもある。まるで障子が若がえったかのように思えてくる。これで厳しい冬をむかえられる。 ※古志HPの「今日の一句...
鳰(かいつぶり)は潜水が得意な水鳥。水に潜って、エサを捕る。一度潜るとなかなか出てこないそうだ。この句は、水のへこみが、鳰の水泳選手のような力強さを感じさせる。この鳰もきっと長く潜っているのだろう。 ※古志HPの「今日の...
秋が深まると、朝晩の気温は急に下がる。朝になって、一夜にして冷たくなっているものに気づかされることがある。水もそのひとつだ。この句は、飴山實の〈水そのままに胃に降りてくる寒さかな〉という句と比べてみると面白い。冬の寒さの...
富有柿(ふゆうがき)は岐阜産の扁平にして大粒な甘柿。たしかに言われてみれば、その形は丸くもあり、四角くもある。世界の矛盾を引き受けたかのような、その柿の両義的な形を興がる一句。 ※古志HPの「今日の一句」の10月27日掲...
秋の潮は満ち引きが激しい。「あきつしま」とは、日本の本州の古名。秋津洲(島)や蜻蛉州とも書く。日本はその国土の三分の二を山林が覆い、三六〇度を海に囲まれた島国である。平地は、その弓なりの国土の輪郭線程度にしかない。それを...
笯(ど)とは、魚を捕るための仕掛けで、筌(うえ)ともいう。筒状や徳利状に竹を編み、その口に返しをつけて、入った魚が出られないようにしている。朝霧の静けさの中、この竹網の仕掛けが水面に返される。おそらく目前は霧だけであって...