竹密に一夜の雪をさゝへけり 松瀬青々

竹と竹が密に組み合って、昨晩降り積もった雪を支えている様子を思い浮かべますが、この句が詠まれたときにこの景はもはや跡形もないのです。なぜなら「さゝへけり」の「けり」という大きな切れ字は、「〜だったのだなあ」という気づきの意味が含まれているので、「どさっと崩れ落ちてきてわかったが、竹と竹が密に組み合って、昨晩降り積もった雪を支えていたのだな」という意になるからです。つまり、雪が崩れる前は、竹と雪の関係がどれほど緊張した状態にあったことなど、まったく気がつかないほど、時間が止まったような静けさにつつまれていたわけですが、この光景が目の前から崩れさってはじめて、その美しさに気づいたということです。雪の「はかなさ」を自然に即してありのままに詠んだ句なのだと思います。

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