釘箱の釘ことごとく寒茜 長谷川櫂
釘箱を開けるとなかの釘がことごとく赤く錆びついていたのだろう。釘箱の外に広がる世界も、同様に真っ赤に染まっている。釘の赤がさらにあざやかにみえてくる。 また掲句を音にしてとらえなおすと、「KUGIBAKO NO KUGI...
釘箱を開けるとなかの釘がことごとく赤く錆びついていたのだろう。釘箱の外に広がる世界も、同様に真っ赤に染まっている。釘の赤がさらにあざやかにみえてくる。 また掲句を音にしてとらえなおすと、「KUGIBAKO NO KUGI...
最後がもし「ありけり」であれば、むかし戦争があったそうだということになるが、この句は「ありにけり」。つまり、そこに戦争があった、そのことにいま気づいたということである。 しかも、この句は「しんと」戦争があったという。戦争...
ちょろぎとは、おせち料理の黒豆の上にちょこんとある、赤くて小さい芋虫のような形をした、あれである。確かにどこか不可思議な存在感がある。時空すなわち時間と空間は、古代から哲学や科学の対象となってきたし、今なお謎が大きい。一...
聞こえないものを聞き、見えないものを見、そして言葉にできないものを言葉にする、それが俳句である。この句の眼目はまさにそこにあるのではなかろうか。蚯蚓はもちろん鳴かない。しかし、俳句ではその声を確かに聞くことができる。この...
無気味にしてユーモラスな貝の姿がありありと目に浮かぶ。蛤のような二枚貝であろうか。腹も腸さえもさらけ出してやってくるかのようで、どうもこの世のものではなさそうである。松瀬青々の〈貝寄せや愚かな貝も寄せてくる〉という句があ...
一茶の〈雪とけて村いつぱいの子どもかな〉と、金子兜太の〈曼珠沙華どれも腹出し秩父の子〉との間にあるような句である。戦時中の貧しき村の様子が目に浮かぶ。今も世界の至る所で、このような光景に出くわすはずだ。