長谷川素逝句集『砲車』
長谷川素逝は、昭十二年、砲兵将校として召集され、支那事変いわゆる日中戦争を戦地で戦います。翌年、病(結核)を発症して内地送還となります。帰国後、中国大陸で詠んだ俳句をまとめます。それが句集『砲車』です。 この句集、異例な...
長谷川素逝は、昭十二年、砲兵将校として召集され、支那事変いわゆる日中戦争を戦地で戦います。翌年、病(結核)を発症して内地送還となります。帰国後、中国大陸で詠んだ俳句をまとめます。それが句集『砲車』です。 この句集、異例な...
金子兜太さんの御宅にうかがったことがあります。今から六年前、兜太さんが九十四歳のときです。雑誌の取材にかこつけて、さまざまな問いを投げまくりました。今思えば、無謀というか、無遠慮というか。この若造め、と思われていたかもし...
古書で句集を買うと、たまに句の上に印の付いているものがありますが、これは前の読者が選をした跡です。どこか心を打つものがあった印です。この連載は、普段はプライベートな「選」をあえて誰かと共有してみようというものです。 そも...
ちょろぎとは、おせち料理の黒豆の上にちょこんとある、赤くて小さい芋虫のような形をした、あれである。確かにどこか不可思議な存在感がある。時空すなわち時間と空間は、古代から哲学や科学の対象となってきたし、今なお謎が大きい。一...
聞こえないものを聞き、見えないものを見、そして言葉にできないものを言葉にする、それが俳句である。この句の眼目はまさにそこにあるのではなかろうか。蚯蚓はもちろん鳴かない。しかし、俳句ではその声を確かに聞くことができる。この...
無気味にしてユーモラスな貝の姿がありありと目に浮かぶ。蛤のような二枚貝であろうか。腹も腸さえもさらけ出してやってくるかのようで、どうもこの世のものではなさそうである。松瀬青々の〈貝寄せや愚かな貝も寄せてくる〉という句があ...