時空ありすこしはづれてちよろぎあり 大谷弘至

ちょろぎとは、おせち料理の黒豆の上にちょこんとある、赤くて小さい芋虫のような形をした、あれである。確かにどこか不可思議な存在感がある。時空すなわち時間と空間は、古代から哲学や科学の対象となってきたし、今なお謎が大きい。一説には、重力(場)とは時空の歪みだといわれる。通常な感覚ではとらえがたいことだが、宇宙論からすれば、宇宙の始まりからして想像を絶することだらけであり、むしろ我々の日常の方がありえない奇蹟にすら思える。掲句には、そんな宇宙の不可思議を楽しんでいるかような感じがある。
出典:句集『蕾』

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