名月をとつてくれろと泣く子かな 一茶

もし子にこう言って泣かれたら、何と言うだろうか。子に難しいことを言っても仕方がないし、泣いても仕方がないとも言えない。かといって、器に水をはり、そこに月を映すなどといったことをわざわざするとも思えない。せいぜい、「とってしまったら、もう二度と見られなくなって、みんなが悲しむから、やめておこう」ぐらいか。ところで、人の心の中にも、このような子と親が同居している。名月がそれを照らしているようだ。
出典:『成美評句稿』

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