残菊や作事場は火をつくりをり 飴山實
作事場とは、土木建築の工事現場のこと。冬が間近に迫る作事場で、火が焚かれているのだろう。一方に人間の火を使う力や自然を加工して人工物をつくりあげる力があり、また一方に菊の花をまだ消さずに残こしているものの力がある。
作事場とは、土木建築の工事現場のこと。冬が間近に迫る作事場で、火が焚かれているのだろう。一方に人間の火を使う力や自然を加工して人工物をつくりあげる力があり、また一方に菊の花をまだ消さずに残こしているものの力がある。
雁が越冬する北国。早々と日が暮れ、戸外で活動していた人々は家に入り、町は静まりかえる。まず灯がひとつともり、そこから厳寒に閉ざされた屋内の暮らしが始まる。遠くには雁の声が聞こえている。ひとつの灯が、まるで人々の温もりのあ...
霜焼けは寒さだけでなく、水分が浸透したままの皮膚が乾くことで、静脈がうっ血しておこる。霜やけになるまで、子どもと一緒に雪遊びをしたのだろう。寒さに負けない子どもの健康さと、その子をたくましく思う親の心が伝わってくる。また...
海鼠(なまこ)は、冬の季語。海鼠と言えば、芭蕉の名句が思い浮かぶ。 〈生きながら一つに凍る海鼠かな〉芭蕉 これまで詠まれてきた海鼠の句は、数知れず。しかし、この芭蕉の海鼠の句は、別格だ。青々はこの句はいわば芭蕉の句の類想...
隠岐は中国地方山陰にある島で、佐渡と同じくかつては配流地であった。後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流されたことでも知られる。その島をたった秋風が、年も暮れる今頃になって吹き届いたというのだから面白い。この句には前書きがある。すな...
すっかり葉も落ちきり、寒さの中で時間がとまったかのように立ち並んでる冬木。しかし、その内側では春になっていっせいに芽吹き出す力が、ひっそりと、そして確実にためてこまれいる。気をそらしたとたん一気に噴きあがった牛乳は、どこ...
息の白さは、寒さを視覚的にとらえる季語である。しかし、この句は、そこにとどまらない。金閣寺を前にして何を言おうが、すべて白い息へと変わってしまうというのである。まるで、口からどんな言葉を出しても、すべて白紙に戻ってしまう...