石走る水のとばしり箒木に 飴山實
この句を読む人は誰しも、万葉集にある〈石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも〉という有名な一首を思い起こすことでしょう。石走る(いわばしる)は枕詞で、垂水(たるみ)とは滝のことだとされています。早蕨の「さ…
この句を読む人は誰しも、万葉集にある〈石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも〉という有名な一首を思い起こすことでしょう。石走る(いわばしる)は枕詞で、垂水(たるみ)とは滝のことだとされています。早蕨の「さ…
蕪村の〈線香の灰やこぼれて松の花〉という、スローモーションのような静かな句がありますが、この飴山の句は対照的に勢いと力強さがあります。もちろんこの句は「一陣の風におどろく」と「松の花」とのあいだに切れがあり、句中に切れの…
はたはたとは、飛蝗(ばつた)のことで、秋の季語です。冬の季語に魚のはたはた(鰰)があるので混同しそうですが、この句の場合は、飛蝗のことだろうと思います。昨年の秋、江ノ島で蜻蛉(とんぼ)の群れが、潮風に向かい合うて飛んでい…
実朝とは、もちろん源実朝、頼朝の次男にして鎌倉幕府第三代将軍のことです。将軍とは名ばかりで、政治の実権は北条氏ににぎられていていましたから、武士というよりも歌人としての人気が高い人です。当時、「新古今和歌集」をまとめた藤…
夕暮れの庭に出て菊を切っている。ふと気づけば、茜色にひたりきってしまっているのだった。散文で書けば、こうなるでしょうか。この句は、視覚の句ではないと思います。夕陽の赤に染まった世界を見ているのではなく、視覚を狂わすほどの…
早乙女(さをとめ)とは、田植ゑをする女性のことですから、夏の季語です。頭の「サ」は、神様のことらしいです。さくらの「さ」も同じで、ちょうど田植ゑの時期に人々が豊作を祈る、その祈りの対象を表すのだそうです。さらに言うと、そ…
一読して、疑問をおぼえた人も多いのではないでしょうか。なぜ手を触れただけで胸まで濡れてしまうのかと。 この句には、中七の「濡ゝる」という連体形のあとに軽い切れがあります。この句を「取り合わせ」として詠めば、「草の花」は添…