バビロンに生きて糞ころがしは押す 加藤楸邨
フンコロガシは日本にはいない。夏の季語とされるらしいが、定着はしていない。かつて古代エジプトでは、フンコロガシは天の運行を司る神であったそうだ。糞を転がすごとく、天体を転がすというわけである。実際、フンコロガシは太陽や月...
フンコロガシは日本にはいない。夏の季語とされるらしいが、定着はしていない。かつて古代エジプトでは、フンコロガシは天の運行を司る神であったそうだ。糞を転がすごとく、天体を転がすというわけである。実際、フンコロガシは太陽や月...
角があり、光沢があり、堅い。その頭はまさに兜。兜虫は羽根を開くと、胴体が一回り小さく見える。その分、大きい頭部がさらに大きく、そして重たそうに見える。炎天に兜をささげ飛ぶその姿は、力強さだけでなく、あわれさをも感じさせる...
ふつう、黴を美しいとは思わないかもしれない。しかし、この句に出会ったからには、そうはいかなくなる。月光に照らされ、青白く光る黴のディテールが目に浮かぶ。命のかたちが、浮き上がって見える。陰翳礼讃の一句。 出典:『雪後の天...
風生晩年の鳥獣戯画を思わせる一句。蟹が何匹も代る代る自分のところにやってきては、泡をぶくぶく吐いては去っていく。擬人法の句だが、リアルな蟹の姿がいきいきと見えてくる。なお、この句には前書きがある。「微恙(びよう)のため一...
松瀬青々に「むらぎもの心牡丹に似たるかな」の句あり、と前書きがある。「むらぎも」とは臓腑のことで、心にかかる枕詞。しかし、この句には「心」という文字がない。おそらく、心は牡丹そのものにたくされたのだ。心物一如。 出典:『...
紙魚(しみ)とは、古くからいる書物の害虫。銀白色の鱗があり、よく走る。尾形光琳はきらびやかさをほこる琳派の大家。紙魚すらも美しく輝くのは、光琳忌なればこそ。光琳を讃える一句。 ※古志HPの「今日の一句」の7月19日掲載分...
夏の昼下がり、道端のひとつところが濡れている。ひと休みしたのか、ひと商売すましたのか、金魚売がやってきたところはかならず水に濡れている。かつて、金魚売は水をはった木桶に金魚を入れ、それを二つ天秤棒にさげて売り歩いた。その...