真白な山また山や春動く 長谷川櫂
雪に覆われた山々が折り重なるようにみえる。いわば、この句は「白」のグラデーションだけで描かれている。微妙な白だけの陰影は波のように確かに息づいているかのようである。作者はそこに春の気配を感じたのだ。 古代の神々の世界のよ...
雪に覆われた山々が折り重なるようにみえる。いわば、この句は「白」のグラデーションだけで描かれている。微妙な白だけの陰影は波のように確かに息づいているかのようである。作者はそこに春の気配を感じたのだ。 古代の神々の世界のよ...
「涅槃」という季語を使って俳句を詠む場合、大きく分けて、涅槃会や涅槃の日を詠む場合と涅槃像や涅槃図を詠む場合とがある。後者では、涅槃像や涅槃図が釈迦入滅の様子を表現しているように、釈迦入滅すなわち涅槃そのものを俳句に詠む...
この句は、蛙の声を呼んでいるというだけでなく、言葉の連なりとしても聴覚的な句である。上五中七の「KenKonno KoKoni yoKiKoe」と書くとわかるが、K音がリズミカルに配置されている。 聴覚を刺激されるのは、...
落椿の蕊のなかから、蜜をむさぼったものの顔があらわれる。その口は金色の花粉にまみれている。蜂か虻のたぐいであろうか。 椿は虫や鳥を媒介して受粉を行う。椿のような植物の生命において、おそらく受粉(送粉)は、最も重要な営みで...
竜安寺と前書きがある。方丈とは寺院の建物のこと。この句はさまざまな読みができる。例えば、この句を三次元のパースの中においてみれば、方丈の大庇のゆったりとした流線と、蝶の不規則に上下する小刻みな曲線が奏でる音楽のようにも見...
朝、薄く積もった雪の上に、猫の足跡がある。作者はそれを猫の家の外で見ている。猫は家に戻り、のこされた猫の足跡のもとに作者がいる。もどるところのない、放浪の詩人らしい句である。猫が素足なのはあたりまえだが、それに驚く作者は...
しゃぼんだまが垣根を越えて、輝きながらゆらゆらと向いの家へ入っていく。不思議と時間が引き延ばされて、そこに空白がうまれたかのように、時の長さを感じさせる。時間の進む速度が遅くなったかような感覚である。不器男の句の多くに、...