地球の内部は、地殻、マントル、核と中心に近づくにつれて高温になる。核は溶けた鉄の塊。その温度は6000度にもなるという。マントルは岩石の層で、核に熱せられ、地殻付近では冷され、内側から外側へ、外側から内側へゆっくり対流している。マントルが部分的に溶けてマグマとなり、地殻の裂け目から吹き出てくるのが、噴火である。マグマも噴火時は1000度くらいあるらしい。
とはいえ、実際に見たわけではないし、説明されてもなかなか実感できない。われわれが知覚の領分を越えたものを目の前にしたきに感じるもの、それが「崇高さ(サブライム)」だ。
平均気温が5度上がるだけで、人類の生存環境は著しい変化を強いられるし、個体レベルで言えば、風邪をひいて5度熱が上がるだけでも生死をさまようことになる。われわれは微妙な温度差の中で存えている弱き存在だ。
にもかかわらず、こうした知覚を超えたものに触れたとき、人々は畏怖と同時に感動を覚える。ときとして、畏怖という不快よりも、感動という快が上回るのだ。
この句の「赤き」ものにも、枯野の寒々しさを上回るものを感じる。これを「崇高さ」と言っていいのであれば、おそらく具体的にマグマと言わず、「赤き」という抽象で言いとどめたことで生じ得た感情であろう。
出典:句集『蓬萊』